「64」(ろくよん) 上・下
横山秀夫 
文春文庫

2016.1。16
こんな顔いらない、もう死にたいと忽然と姿を消した娘を捜査中の刑事部上がりのD県警広報官が、たった7日間で幕を閉じた昭和64年の1月5日に起きた、D県警史上最悪の14年未解決の誘拐殺人事件に翻弄される物語。

娘からとも思える自宅に掛かってくる無言電話、誘拐事件での犯人からの脅迫電話の録り損ない、誘拐被害者宅への長官慰問拒絶、誘拐事件捜査員の辞職等などの様々の伏線が巧みに絡まり、予想外の事件の展開に引き込まれる一気読みの面白さ。

ただ、記者クラブとの闘い、警務部と刑事部との組織間抗争等、冗漫な感じもあり上・下冊にする要があったのか。この作家は短編のプロと思っているが、その良さが消えてしまっている。一冊に収めて欲しかった。

それでも、ミステリー秀作の一冊。力作。 
「帰蝶」
諸田玲子
PHP研究所

2016.1.25
子が父を、兄が弟を討つ親兄弟で殺し合う乱世の時代、傑物斎藤道三の娘として生まれ、鬼神織田信長の妻となった農姫の生き様が、都京都の豪商にして朝廷の御倉職との淡い交流を交え描かれる。

残虐無比な殺戮をしてのける信長を崇めると同時に憎悪し、愛しむ妻の姿が、信長があちこちの女性に産ませる子供を我が息子、娘として育てなければならない戦国の女性姿が、語り尽くされた信長のは話と違って、興味深く読める。

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(本タイトルのフォント青色の書籍が、もう一度読みたい本

2016.1月