「火花」
又吉直樹
文藝春秋

2015.11.3

お笑い芸人、又吉直樹さんの2015芥川賞受賞作品。

「漫才は、本物の阿呆と自分は真っ当であると信じている阿呆によってのみ実現できる」と信じている先輩漫才師を師匠と仰ぐ、売れないお笑い芸人の生き様の話。

世間から置き去りにされ、所詮芸人と馬鹿にされる生活を続けるも、相方と十年、常識を覆す事に全力で挑める者だけが漫才師になれると自分の人生を得る。

書き言葉で会話が綴られる異和感や、くどくどとした展開で最初は戸惑いがあったが、読み進んでいくうちに、丁寧に綴られた文章から、作者の書くことへの誠実さ、真摯さが伝わってきて、引き込まれてしまった。作者の真摯さが伝わってくる作品。綴りがこなれてくるともっといいのだが。
「人間失格」
太宰治
集英社文庫

2015.11.10
人間に、いつも恐怖に震いおののき、自分に自信を持てず、そして、女に誘われるまま次々と女性に関わり、死んでくれと頼まれたら一緒に自殺未遂をくり返し、最後には薬物におぼれた恥の多い生涯を送った自らを人間失格と断ずるも、「ただ、一切は過ぎて行く」が、人の世の変わらぬ真実と語る男の手記。

本篇の最後に、「この手記は他人にとって有意義」と思えるので公表と述べているが、本篇は、全くもって有意義とは決して思えない。また太宰は、芥川賞選考委員に対して「芥川賞を下さい」という内容の手紙を送るような人品骨柄からして卑しいとしか言いようがない。

太宰治は、本作品完成の1ヶ月後、自らの命を断つ。その意味で「ただ、一切は過ぎて行く」は、太宰の遺言であろう。

太宰治は、私の嫌いな作家の一人だったが、お笑い芸人の又吉直樹が余りにも太宰、太宰と云うものだから、我慢して再読したのだが、矢張り太宰への感情は更に悪化する結果となった。
「ハリガネムシ」
吉村萬壱
文藝春秋

2015.11.15
2003年芥川賞受賞作品。倫理を教える25歳の高校教師が、内なる欲望や衝動を、夫が人殺しで刑務所に入っている23歳のソープ嬢にぶつける話。セックスと暴力に終始する。

カマキリに寄生するハリガネムシの様に、どうしようもない欲望や衝動が我々には寄生しているのだろうかを問う衝撃作と云えば恰好が良いが、読んで面白いかと云えば、面白くない。心に響いたかと云えば、響いても来ない。しかし巧みな人で、アマチュア向きでない、プロ向きの作家。

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(本タイトルのフォント青色の書籍が、もう一度読みたい本

2015.11月