読書ノート

(本タイトルのフォント青色の書籍が、もう一度読みたい本

「純愛小説」
篠田節子
角川書店

2015.7.6
様々な愛にまつわる四短編集。
「純愛小説」数限りなくあった女性関係に明け暮れた男性が、あらぬ事で妻から離婚を切り出された。その男と中学時代から30年余りの付き合いになる女性編集者が、その窮地を助けよとするが、その厚意が思わぬ結末となっていく。

「鞍馬」行方知らずになった姉が、貧民窟のような木造アパートの一室で 痴呆症状で見つかる。父、母、妹の為だけに生きてきた人生で、65歳になって始めて自分が主役になった姉は、カルチャースクールで知り合った、自分の店を構えたいと云う板前の男に全財産を失うまでの一年の間に、一生分の女の幸せを得る。

小憎らしい程、上手いのだが、ただただ上手いだけでは、残る二編を読む元気は出ない。 
「私の恋人」
上田岳弘(うえだたかひろ)
新潮社

2015.7.15
今ときめく又吉直樹の「火花」と競った2015三島由紀夫賞受賞作。

生まれ変わりを繰り返している私。一人目は10万年前のクロマニヨン人、二人目はユダヤ人、三人目は、IT系の会社で働く日本人が、人類の変遷を辿る。プログラムとCPUの世界が、これからの地球を支配すると云うのだろうか。

何が言いたいのか全く分からない。文章そのものが分からないから始末に負えない。最初の10ページを読んで、何が書いてあったかと問われて答えられる人は居るのか知りたい。

この作家は、デビュー作が新潮、新人賞。第二作目が芥川賞候補。本作品が三作目。きっと業界期待の星なのだろうが、独りよがりも甚だしい。こういう訳のわからない出版物が活字離れを起こしているのだ。
「禁忌」
浜田文人
幻冬舎

2015.7.25
銀座のクラブに派遣された女性が自殺する。元刑事の人材派遣会社の調査員が、その真相を探るなか、そのクラブの同僚ホステスが殺害され事件の謎が深まっていく。

確かに、計算された筋運び、徹底した調査、取材による派遣の裏事情、夜の銀座、けいさつの裏事情等、興味深く読む事が出来るのだが、物語としては、血湧き、肉躍るような興奮もなく面白いとは言えない。事柄だけが、ただただ順序だって展開していく薄っぺらな読みものと云った感じ。作者の力の入れ方が間違っている。

この本の帯には、「正統派ハードボイル」、「銀座の闇と人間の業」などと面白そうに書かれているが、全くの期待はずれ。この出版社は、宣伝文句だけが取り柄のどうしようもない会社。ハードボイルとは、破滅をも何のその、自分の信条が貫き通された生き様が描かれた物。ハードボイルと云えば、北方謙三、誉田哲也だ。

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2015.7月