「大奥の座敷童子」 堀川アサコ 講談社 2015.5.10 野笛藩城下一の美女と決まった今井一期(いまいいちご)は、江戸城大奥に潜入し、連れさられた野笛の里の座敷童子(ざしきわらし)を連れ戻すよう命じられる。 13代将軍、家定公の妖怪やら、五代将軍綱吉の幽霊の暗躍やら、大奥の日常が小気味の良いタッチで描かれ読んで楽しいファンタジー。 |
「死んでたまるか」 伊藤潤 新潮社 2015.5.18 鳥羽伏見の戦いから箱館戦争迄の一年半、動乱の幕末維新から文明開化の明治の世を全力で駆け抜けた幕府陸軍歩兵奉行、大鳥桂介の物語。 徳川家と、重代相恩の関係にある親藩、譜代諸藩は、薩長を中心とする奸賊に戦わずに次々と平身低頭、降伏するなか、「徳川家恩顧の臣として、賊徒に一矢も報いざれば、これぞ士族の恥」と、大鳥桂介は、北関東、東北、蝦夷地へと「死んでたまるか」と戦い抜く。 大鳥桂介率いる仏式歩兵部隊と榎本武揚の艦隊の連携も叶わず、武士の矜持を守り抜き、最後の武士として死なせてくれと、我事終れりと自刃する勇者、若くして(土方歳三、享年35歳)次々と死んでいく勇者が語られる。 思い通りに生きて、望むままに死んだと語られるのだが、胸に響く物語でなく、戊辰戦争通史に止まっているのが残念。。 |
「楢山節考」 深沢七郎 中央公論社 2015.5.23 70歳になると山に死にに行くと云う貧しい部落の因習に従い、おりん婆さんが 一人息子の背板に乗って楢山まいり行く話。 歯も抜けたきれいな年寄になって行きたいと、石臼のかどに歯をぶつけるおりん婆さんの惨い話も、何故か美しく美しく伝わってくる。誰もが知る、姥捨て民話が、かくも美しく描かれ、人の美しさとは何かを知らされる。 取り繕い感のない、御仕着せでない、正に衒いのない綴りが、巻末の伊藤整の「自己満足的に書き下ろした独り合点の千篇一律のものとは違うもの」の解説となっているに違いない。三島由紀夫は、「総身に水を浴びたような感じがした」と選評している。 42歳のギタリストの処女作との事だが、きっとギタリストとしても一流なんだろう。 |
(本タイトルのフォント青色の書籍が、もう一度読みたい本
2015.5月