「永遠の0(ゼロ)」
百田尚樹
講談社文庫

2014.7.17
祖母が亡くなった時、小さい時から可愛がってくれた祖父は、実は血が繋がっていなかったと知らされる。特攻隊で死んだと聞いた実の祖父は、どんな人だったのか、戦友会の祖父を知る人々を訪ね歩く。祖父の実像が、少しずつ明らかになっていくと共に、一銭五厘の赤紙でいくらでも補充がつき、最初から道具扱いでしかなかった一兵卒視点で戦争の実態が語られる。

実の祖父は、戦闘機乗りとして神技の凄腕を持ちながら、「私は妻の為に死にたくありません。生きて帰りたい」と特攻志願を拒否し、
海軍イチの臆病者と云われた。    

解説で児玉清は、心が洗われるような素晴らしい感動をもたらすと絶賛するが、私には、胸糞悪い不愉快極まりない劣悪な作品としか思えない。250キロの爆弾をつけ、「我、タダイマ突入ス」と命を散らしていった若者達を題材に、子供騙しの嘘っぽい人情物に仕立て上げるのは、非礼千万。この作者の人間性を疑う。品性下劣。子供騙しの結末には言葉がない。この作者はもう御免だ。
「十三歳の仲人」(御宿かわせみ三十二)
平岩弓枝 
文春文庫

2014.7.21
御宿かわせみシーリーズ32弾。この巻は、かわせみの女中お石の縁談話(お石の縁談)、お石の武勇伝(代々木野の金魚まつり)、お石の嫁入り(十三歳の仲人)の三篇が核。お石の女っプリ、心意気、かわせみの皆のお互いへの思い遣りにグット目頭が熱くなる。心の襞に響いてくる作品。

その他は、十八年目の春(十六の時、行方知れずになった一人娘の話)、浅妻舟さわぎ(偽書、禁書にまつわる殺し)、成田詣での旅(女中奉公の十五の小娘が、女番頭と呼ばれ、ついには後添いにまでに)、芋嵐の吹く頃(裕福な商家の隠居の身投げ)、猫芸者おたま(弟をたぶらかした妓への復讐)の八短編。 
   
「御宿かわせみ」
平岩弓枝
文春文庫

2014.7.28
  

八丁堀、鬼同心と云われた父親の娘、るいは、家督を継ぐ事なく、大川端で「かわせみ」と云う小さな宿屋を開き女主人となる。そして、親代々、八丁堀の与力の家の冷飯食いの次男坊、一つ年下の幼なじみで恋人、神林東吾と共に、かわせみに投宿する様々な人々を巡って起こる事件や市井の事件を解決していく。

江戸庶民の生活の匂い、江戸市井の風情、古き良き時代のほのぼのとした人情が漂う素晴らしいシリーズ第一弾。

初春の客(禁制の江戸へ連れ込まれた異国人黒ん坊、阿蘭陀人との混血遊女の悲話)、花冷え(かくれて色を売る深川芸者が、かわせみに)、卯の花匂う(敵討ち探しの若侍と、針仕事までして、主人に忠義を尽くそうとする女中)、秋の蛍(旅旅籠への押込み強盗が連日連夜続くなか、ぐしょぬれでかわせみに辿り着いた老人と娘)、 倉の中(質屋の女房が、奉公人の中番頭と不義を働いて駆落ちと思いきや)、師走の客(勘当された親の家に我が子を捨てにきた娘)、江戸は雪(50両と云う客の大金が紛失)、玉屋の紅(江戸の取引先に挨拶に出て来た佐原の醤油屋の若旦那と女房が、かわせみに。その若旦那が芸者の女と無理心中)の八短編  


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読書ノート

(本タイトルのフォント青色の書籍が、私の好きな「100冊の本」候補)

2014.7月