「夏と花火と私の死体」 乙一(おついち) 集英社文庫 2014.6.15 1996ジャンプ小説新人賞受賞作。乙一16歳の処女作。9歳の夏、同級生の女の子に、秘密基地となっていた木の上から突き落とされ、あっけなく殺されてしまった私。死体を隠そうとする同級生の女の子とその兄の幼い二人の兄妹を、死体の私が語る一人称怪奇小説。 「優子」 父の友人の物書きの家で、女中として住み込みで働き始めた清音。主人の部屋で寝たきりの生活をしている優子と云う名の奥様の顔を見る事がなく、主人の外出の留守の時を利用して部屋に忍び込むと、髪の長い色白の人形がやさしく寝かされていた。外出先から帰って主人が見たものは、優子の炎に包まれた姿だった。この家は、行き倒れていた女と子に乗っ取られた家で、女が持ち込んだペラドンナと云う悪魔の植物の実の所為で、主人は、妄想と現実の境目がぼやける意識の混濁が現れていたのだった。 独特な作風と文体。描写が巧みで、表現も上手い。16歳とは信じられない。もっと、リアリティのある物語を読みたいもの。 |
「オレたちバブル入行組」 池井戸潤 文春文庫 2014.6.28 就職したら一生安泰と云われていた時代の銀行をバッグとした企業小説。支店長命令で融資した取引先が倒産し、貸付金が焦げ付いてしまう。仕組まれた計画倒産と分かり、その回収に乗り出す。テレビ放映「やられたらやりかえす、十倍返し」で一躍人気となった。 現実味のない展開で馬鹿馬鹿しさが先行し、興奮も感動も全くなし。単なるエンタメ小説とは云え、興奮、感動があるべきだろう。 |
(本タイトルのフォント青色の書籍が、私の好きな「100冊の本」候補)
2014.6月